【翻訳の仕事】邦訳の制作プロセス:「翻訳から校了」

翻訳者育成講座の講師Misa先生の記事。邦訳の制作プロセス:「翻訳から校了」

みなさん こんにちは!
英日翻訳講師のMisaです。
前回は「洋書の邦訳の制作プロセスの前半」をご紹介しました。(前回のブログ記事「【翻訳の仕事】邦訳の制作プロセス:『リーディング』」はこちら)。
さて今回は、その後半の「翻訳から校了」までをお話ししましょう。

 

 

「翻訳から校了」までのステップ

洋書の邦訳の制作が決定すると、次は「翻訳」に入ります。
「翻訳」は翻訳者が行いますが、翻訳者の受注形態は、出版社とじかに仕事をするケースと、翻訳会社が仲立ちをするケースに分かれます。
いずれのケースにおいても、「翻訳から校了」までのステップはほぼ同じです。
以下に記します。

  1. 翻訳のスケジュールを作成(翻訳者と出版社、翻訳会社が相談して)
  2. スケジュールにそって、翻訳者が訳出
  3. チェッカーが翻訳原稿を「チェック」
    「チェック」⇒チェッカーが原文と訳文を照合し、訳文に誤りがないか確認して、誤りやわかりにくい表現があれば修正案を提示する。
  4. チェック済みの翻訳原稿を翻訳者がブラッシュアップ
  5. ブラッシュアップされた翻訳原稿を編集者が編集
  6. 翻訳原稿が「ゲラ刷り」となり、校正者が校正
    「ゲラ刷り」⇒校正(誤字脱字のチェックなど)を行うための「校正刷り」のこと。ワードなどで書かれた「原稿」が、イラストやデザイン、ページ番号などが入っている「本番のレイアウト」に流し込まれたものになる。もともとのゲラ刷りは「紙」だが、今は「電子データ」であることも多い。
  7. 校正済みのゲラ刷りを翻訳者が最終チェック
  8. 校了

 

このようなステップです。
翻訳から校了まで、いくつもの作業、そして何人もの手を経ていますね。

翻訳会社が仲立ちをする場合は、「コーディネーター」と呼ばれるスタッフがこれらすべてのステップを「コーディネート」、つまり、構築・調整・管理します。また、「コーディネーター」が翻訳原稿のチェックや編集、校正を行う場合もあるようです。

 

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「翻訳のスケジュール」――2つの方法

さて、英日翻訳に関心のある方、すでに学習中の方は、②のステップ(訳出)はもちろん、①④⑦のステップにも関心がおありのことでしょう
これらのステップの詳細やわたしの経験をご紹介します。

まず、①のステップ。「翻訳のスケジュールを作成」するときは、書籍のジャンルや内容がポイントになります。
たとえば学術書や実用書であれば、「数章ずつ訳出して提出するスケジュール」が一般的です。学術書や実用書は「用語」の決定や統一が必要なので、この方法がとられ、翻訳者はチェッカーや編集者とこまめに相談しながら「用語」の決定や統一を行っていきます。
一方、フィクションや伝記物であれば、「全編を訳出してから提出するスケジュール」が一般的です。
フィクションや伝記物はひとつの物語なので、ストーリー全体の流れに気を配って訳出する必要があり、全編を訳出してから提出する方法が適しています。

 

 

「チェック済みの翻訳原稿をブラッシュアップ」

次に、④のステップの「チェック済みの翻訳原稿をブラッシュアップ」。
このステップは翻訳者にとって、「非常にありがたく、やりやすい」ものです!
➂のステップでチェッカーが、誤訳やわかりにくい表現、表記の揺れなど不備な点をくまなく指摘し、修正案を提示してくれており、また注釈が必要なところも提案してくれているので、ブラッシュアップしやすいんです。
翻訳にはやはり、「客観的な目」、「第三者の目」が不可欠であるとあらためて実感します。

 

 

「校正済みのゲラ刷りを最終チェック」――編集者や校正者の〝プロの仕事〟に学ぶ

⑦のステップの「校正済みのゲラ刷りを最終チェック」はうれしさと興奮でワクワクしながらも、緊張がひしと押し寄せてきます。
まず、自分の翻訳が、自分の文章が、〝ゲラ刷り〟になっているのを実際に目にすると、感動とうれしさと達成感で胸がいっぱいになります!
そしてそのあと、「さあこれから、最終チェック! このあと本になるんだ!」と思い、緊張がどっと押し寄せてきます。

翻訳者としてまだ駆け出しのころ、わたしはこの⑦のステップで非常に大切なことを学びました。
それは「語順」と「読点の位置」! 編集者や校正者が整えてくれた文章を見て、「語順」と「読点の位置」しだいで訳文がぐっと読みやすくなったり、文脈がわかりやすくなったり、文章の「キモ」(意味の中心部分)を際立たせられるということを痛感したんです。
「これがプロの仕事なんだ!」と感激して、整えてくれた文章を何度も何度も読んだことを今でもおぼえています。
さて次回は、この⑦のステップでわたしが学んだことをご紹介しますね!

 

 


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ABOUTこの記事をかいた人

兵庫県出身。大阪女学院短期大学英語科、Gwinnett Technical Institute Travel Management学科卒業。電機会社勤務、英語塾経営・運営を経て、翻訳業に従事。現在、児童英語講師と翻訳通信講座添削トレーナーも務める。 翻訳実績(和訳):ノンフィクション(人文系)、コミック(英文学対訳シリーズ)、雑誌(クラフト系)、映画関連資料(公式サイト、劇場用パンフレット、予告編、特典映像、プレスリリースなど) 『趣味は洋画と洋楽(〝あの〟映画を観てからQueenに夢中!)鑑賞、阪神タイガースの応援(田淵・掛布時代からのファン! わっ、古ぃ~)。日課は20分程度のウォーキングとストレッチで、運動不足解消のため両手両足を大きく振って歩くので、すれちがう人から「お! がんばっとるな!」と声をかけてもらっています(笑)。そして夜はお酒のアテづくりと「家呑み」。毎晩8時以降は居酒屋の女将に変身します!』