【文芸翻訳】邦訳の制作プロセス:「リーディング」

翻訳者育成講座の講師Misa先生の記事。リーディングスタッフとは?

みなさん こんにちは!
英日翻訳講師のMisaです。
英日翻訳に関心のある方、すでに学習中の方は、「洋書の邦訳の制作プロセス」にご興味のある方が多いのではと思います。
そこで数回にわたって、このプロセスをご紹介します。今回はこのプロセスの「前半」についてお話ししましょう。

海外で爆発的に売れた大ベストセラーであれば、その邦訳の制作は当然の流れといっても過言ではなく、日本の出版社は積極的に版権(著作物を出版する権利)を獲得し、適切な翻訳者を選定してすみやかに制作に入るのが一般的です。

では、そこまでの大ベストセラーではない書籍、つまりそこそこ売れた書籍や、学術的・文化的な面で魅力のある書籍などは、どういったプロセスを踏むかと言いますと――

 

まず、「邦訳を出す価値があるかを検討」

出版社はまず、「邦訳を出す価値があるかを検討」し、そして価値があると判断した場合は制作に入るのが一般的です。
したがってこの、「邦訳を出す価値があるかを検討」するステップが、邦訳の制作プロセスの前半において、非常に重要になってきます。
そこで次に、このステップについてご説明しましょう。

 

「リーディング」

たとえば、『ABC』というアメリカの小説で、アメリカやイギリスでそこそこ売れた作品があるとします。
そしてある日本の出版社が、この小説の版権の獲得を検討していると仮定しましょう。
まず出版社は、この『ABC』という小説の「リーディング」を、リーディングスタッフもしくは出版翻訳家に依頼します。
「リーディング」とは、「海外書籍の「シノプシス」を作成し、日本の読者に受け入れられるかどうかを検討して報告する作業」を言います。
そして「シノプシス」とは、「海外書籍のあらすじ、評価、所感、日本の読者に受け入れられそうかなどをまとめた文書」です。

 

「リーディングスタッフ」という仕事

この「リーディング」を専門におこなうのがリーディングスタッフで、出版社の多くは常に一定数のリーディングスタッフを確保しています。
リーディングスタッフを確保していない場合は、翻訳エージェントに「リーディング」を依頼するのが一般的です。
ですから翻訳エージェントも、常に一定数のリーディングスタッフを確保しています。

こうして、リーディングスタッフもしくは出版翻訳家が『ABC』の「リーディング」をおこない、作成したシノプシスを出版社に提出します。
出版社はそのシノプシスを参考にして、邦訳を出す価値があるかどうかを検討します。
そして、価値があると判断して出版が決定した場合は、適切な翻訳者を選定して、邦訳の制作に入ります。
もし出版翻訳家が『ABC』の「リーディング」を担当していたなら、その出版翻訳家が『ABC』の翻訳も担当するのが一般的です。

と、このような流れが、「邦訳の制作プロセスの前半」になります。

 

「リーディングスタッフ」は翻訳業界に不可欠な職業

ここまでお読みいただいておわかりのように、邦訳の出版において、「リーディング」という作業は非常に重要であり、大きな責任を伴うものです。
しかも、これを専門におこなう「リーディングスタッフ」という仕事もあり、この「リーディングスタッフ」は出版翻訳家と同様に、翻訳業界になくてはならない職業です。
さらには、リーディングスタッフとしてキャリアを積み、書籍の翻訳をおこなうだけの英文読解力・翻訳力・日本語表現力が備わっていると評価された場合は、リーディングスタッフが翻訳を担当することもあるんです。

また、キャリアやスキルの面から見ても、この「リーディング」は出版翻訳家にとって不可欠なスキルの1つです。
上述したように、出版社から直接、「リーディング」を依頼される場合もあれば、自分が翻訳を担当したい原書のシノプシスを作成して出版社に提出し、出版が決定した場合は翻訳を担当する、というケースも多いからです。

 

 


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ABOUTこの記事をかいた人

兵庫県出身。大阪女学院短期大学英語科、Gwinnett Technical Institute Travel Management学科卒業。電機会社勤務、英語塾経営・運営を経て、翻訳業に従事。現在、児童英語講師と翻訳通信講座添削トレーナーも務める。 翻訳実績(和訳):ノンフィクション(人文系)、コミック(英文学対訳シリーズ)、雑誌(クラフト系)、映画関連資料(公式サイト、劇場用パンフレット、予告編、特典映像、プレスリリースなど) 『趣味は洋画と洋楽(〝あの〟映画を観てからQueenに夢中!)鑑賞、阪神タイガースの応援(田淵・掛布時代からのファン! わっ、古ぃ~)。日課は20分程度のウォーキングとストレッチで、運動不足解消のため両手両足を大きく振って歩くので、すれちがう人から「お! がんばっとるな!」と声をかけてもらっています(笑)。そして夜はお酒のアテづくりと「家呑み」。毎晩8時以降は居酒屋の女将に変身します!』