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産業翻訳を覗いてみませんか?[医学翻訳編No.7]

by Masako

こんにちは、英日翻訳家デビュー講座で添削を担当しておりますMasakoです。これまで医薬翻訳について、医薬品の添付文書や臨床試験の翻訳に関する用語などに触れてきましたが、今回は、医薬品の添付文書と同様に、わたしたちの生活にもっとも近い「臨床検査」についてお話ししましょう。

医療翻訳

身近な臨床検査

前回「臨床試験」と「臨床検査」は名称が似ているために間違いやすいことに言及しました。「臨床試験」は「治験」とも呼ばれ、英語では ”Clinical trial” または ”Clinical study” と呼ぶことはすでにご存知ですよね。

一方国民皆保険の日本に住む人には、企業や地方自治体からほぼ無料で提供される定期健康診査で受けるお馴染みの一連の検査、またはどこか不調を訴えて医師の診察を受け、疾患の診断のために受ける検査は「臨床検査」です。英語では “Clinical Laboratory Tests” と呼ばれます。血液や尿検体を検査室や臨床検査専門の施設(laboratory)に送って分析します。すべて正常であれば、あ〜やれやれと自身の健康体に自信を持つことになりますよね。ですが、結果があまり良好でなかった場合は、医師が経過観察をするか、診断をくだして治療を開始するか、さらに精密検査をするよう依頼することになります。

標準的な定期健康診査の検査種目は、通常以下の順で実施されますよね。

尿採取
Urine sampling for Urine test, Urinalysis

身長・体重・腹囲測定
Height/Body weight/Abdominal circumference

血圧測定
Blood pressure

血液採取
Blood sampling for blood test, Hematological examination, Blood biochemistry

胸部レントゲン
Chest X-ray

心電図
Electro-cardiogram (ECG)

ほかにも任意で大腸がん検査のための検便、乳がん・子宮がん検査などが含まれます。

 

検査によりなにを調べるのでしょう?

上記の各検査により調べる検査項目を以下に示しましょう。

尿検査

・尿糖
Urinary sugar, Urinary glucose

・尿たんぱく
Urinary protein

・尿潜血
Occult blood in urine

血圧測定

・収縮期血圧
Systolic blood pressure

・拡張期血圧
Diastolic blood pressure

血液検査

・中性脂肪
Neutral fat, Triglyceride

・HDLコレステロール
High-density lipoprotein (HDL) cholesterol

・LDLコレステロール
Low-density lipoprotein (LDL) cholesterol

・GOT (AST)
Glutamic-oxaloacetic transaminase (GOT)

・GPT (ALT)
Glutamic pyruvic transaminase (GPT)

・γ-GT (γ-GTP)
Gamma-glutamyl transpeptidase (γ-GT)

・アルブミン
Albumin

・空腹時血糖
Fasting blood glucose

・HbA1c (NGSP)
Hemoglobin A1c

・赤血球数
Red blood cell count

・ヘモグロビン
Hemoglobin

・ヘマトクリット
Hematocrit

・白血球数
White blood cell count

・血小板数
Platelet count

・血清クレアチニン
Serum creatinine

・eGFR
Estimated glomerular filtration rate (eGFR)

・血清尿酸
Serum uric acid

いずれの用語も患者にわかりやすいように医師が用いるもの(例えばblood sugarやurinary sugarなど)、また症例報告書や文献などで使用する統一されたPreferred term(blood glucose, urinary glucoseなど)で使い分けされています。

尿検査は主に腎機能を評価するためです。これらは定性検査(Qualitative tests)で、結果は+(Positive)または ー(Negative)で表示されます。コロナ感染症の抗体の有無を判定する場合も定性検査で、陽性・陰性で示されますよね。これに対し、血液検査のように数量や数値で表示される検査は定量検査(Quantitative tests)と呼ばれ、コロナ感染症の場合は、抗体の検出量をより精密に数値で表します。

上記でお気づきのように、わたしたちが一般に血液検査とひとまとめに呼んでいる検査項目は、血液学的検査 ”Hematological examination or Hematology” と 血液生化学的検査 “Blood biochemistry or Blood chemistry” に分類されます。

通常の定期健康診査の血液学的検査 “Hematological examination or Hematology” は、赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビン、ヘマトクリットなど血液に含まれる細胞成分の組成を調べます。

また、血液生化学検査 “Blood biochemistry or Blood chemistry” は、コレステロール、GOT(AST)、GPT(ALT)、血糖値、クレアチニン、尿酸など、血液の液体成分である血清 “Serum” や血漿 “Plasma” に含まれる成分を数値化します。これらの数値に基づき肝機能および腎機能を評価します。

尿検査が陽性であったり、血液検査の値が基準値 “Reference range” より高すぎたり低すぎる場合は、さらに詳細な精密検査を受ける場合もあります。

医療ドラマで知った医療用語いろいろ

健康診査は、“Medical examination” または “Medical checkup” ですが、ごくごくカジュアルな会話では、”Physical exam” とか単に “Checkup” と言っているようです。

また、精密検査は “Detailed examination” または “Complete checkup” であると考えていたのですが、ある米国の医療ドラマで健康診査は“Workup” 精密検査は “Full workup” と呼んでいたのが印象的でした。医師仲間でよく使われるいわゆるjargonなのでしょうか? Workoutと間違えてしまいそうな表現ですよね。

ほかにもくだんの医療ドラマでインパクトがあった医療用語 “Immersion therapy” と “Exposure therapy” があります。認知行動療法中の心理的手法で、それぞれ「没入療法」「曝露療法」ですが、患者の恐れや不安の起因となる事象や状況を忌避するのではなく、逆に意図的に触れさせ、その原因を解明して徐々に慣れさせていく療法です。その医療ドラマの字幕では背景をとらえたうえで「荒療治」と訳されていました。なあ〜るほど、と思わず納得。

このように、医療ドラマで印象に残った用語は、辞書や文献などで使用されている用語、また通常の会話で使われている用語とは一味違っており、興味深く観ています。みなさんも何かおや!? っと思った単語に出会ったら、ぜひメモしてみてくださいね。 

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