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産業翻訳を覗いてみませんか?【医学翻訳編No.2】

by masako

〜Medical translationをより深く〜

こんにちは、Masakoです。

今回は前回お約束した私たちの生活に最も近い医薬文書である「添付文書」についてお話ししようと思います。
前回記事

医薬品を購入し、外箱を開けると中に薬瓶や軟膏チューブ、カプセル剤や錠剤の包装シートなどと一緒に折りたたんだ注意書きが入っていますよね。
処方薬の場合は、処方薬局で薬剤の説明書きをプリントアウトしてくれます。日本語ではこれを「添付文書」といいますが(とっても紛らわしい! メールに添付されている文書も、報告書などの文書の巻末に添付されているのも、添付文書ですから)、英語では”package insert” (米国)または “Product monograph” (欧州) と呼びます。
医薬品のパッケージに挿入されている製品の注意書き。そのものずばり、分かりやすいでしょう?

 

正規の「添付文書」はだいたい書式が決まっていますが、近ごろは情報の提供の仕方も様々で、スマートフォンなどでも情報にアクセスしやすいように、また患者さんが問題なく服薬・投与できるように、説明書はより簡単な言葉で読みやすいよう、イラスト付きにしたり、実物の写真入りにしたり……と、各社いろいろ工夫しているようです。
それでも製薬会社が提供しなければならない情報は必ず含まれています。

 

一例として、通年性アレルギーの私が長らく服薬していた商品名クラリチン錠(Claritin tablet)という抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1拮抗薬)についてお話しますね。
クラリチンは抗ヒスタミン薬としては第二世代にあたる薬で、1987年生まれ。これは世界のいずれかの国で最初に承認を受けた日で、国際誕生日と言います(international birth date、これもそのものずばり)。既に特許期限が切れているため、一般名ロラタジン(loratadine)の名でジェネリックが販売されており、医師の処方箋なしで薬局の棚に並んだ薬剤を購入することもできます[処方箋なしで購入できる薬剤をOver the counter drug(OTC)薬と呼びます]。
初代の抗ヒスタミン薬は、副作用が強く、眠気がひどかったため、高校時代私は授業中の居眠り名人でした。

 

私は現在では、第二世代でも比較的新しい商品名ビラノア(Bilanoa)[一般名ビラスチン(bilastine)]を服用していますが、このように医薬品には、その製品を開発し、製造して市販承認を受けた製薬会社の製品名と、国際的に適用される一般名が必ずついています。

産業翻訳を覗いてみませんか?【医学翻訳編No.2】

さて、クラリチン錠の説明書に戻りましょう。
薬事法で規定された正式な処方箋薬の添付文書に必ず含めなければならない情報としては、以下が挙げられます(FDA package insert templateより主要項目を抜粋)。

 


  1. Description                  組成・性状

  2. Clinical Pharmacology          臨床薬理

  3. Pharmacodynamics            薬力学

  4. Clinical Studies               臨床成績

  5. Indications and Usage          効能・効果

  6. Contraindications             禁忌

  7. Warnings                   警告

  8. Precautions                 使用上の注意

  9. Adverse Reactions            副作用

  10. Clinical Laboratory Test Findings 臨床検査結果

  11. Overdosage                過量投与

  12. Dosage and Administration     用法・用量

  13. How Supplied               包装


 

なんだか見慣れない用語が並んでいますし、通常の日本語訳とは異なる訳もありますね。
ですが、これらの訳はほぼ定訳になっていますので、1対1で(例えば、Dosage and Administrationには用法・用量を当てる)というように使用します。
このリストはかなり長く、例えば、臨床薬理には、薬物動態(pharmacokinetics)、すなわち、薬剤がどのようにヒトの体に吸収され、分布し、代謝され、排泄されるのか、ほかの薬剤との相互作用、また高齢者、小児患者、または妊婦や授乳婦への投与などに関する詳細が説明されています。

 

これらのうち、医薬品の消費者である私たちの関心は、やはり5番の効能・効果、8番使用上の注意、9番副作用、それに12番用法・用量などでしょうか。
新規ワクチンでは副反応が大きな話題となりましたよね。これは9番の副作用にあたります。

 

また、用法・用量も重要です。Claritinの場合は以下のように表示されています。

Usual doses
Adults (including older people): 10 mg once daily (one tablet once daily)
通常成人には(高齢者を含め):10 mgを1日1回服用(1錠/日)

Children aged 2 to 12 years of age:
Body weight over 30 kg: 10 mg once daily (one tablet once daily)
Body weight 30 kg or below: Not recommended
小児2〜12歳:
体重30 kg超の小児:10 mgを1日1回(1錠/日)
体重30 kg以下:本薬の投与は推奨しない。
(Information for the patient Loratadine 10 mgより抜粋)


 

注射剤や点滴投与剤などの場合は、さらに詳細に希釈倍率や投与方法(皮下注射か筋肉内注射か、静脈内点滴投与かなど)が以下のように示されます。

 

In adults, XX mg of ○○is usually administered by subcutaneous injection.
通常、成人に○○としてXX mgを皮下注射する。

 

さらに、ここで大切なのは、4番臨床成績(Clinical Studies)と 10番臨床検査結果(Clinical Laboratory Test)の違いでしょう。
臨床試験は、上記の薬物動態を調べたり、実際の患者に投与してその有効性を評価したり、適切な用量・用法を決定したりするための試験です。
一方臨床検査とは、私たちが毎年のように実施する血液検査、尿検査、レントゲン検査などの検査を指します。

 

次回はこの臨床試験についてお話ししたいと思います。 

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