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翻訳家の一日

翻訳とトレード

by motoi

現在、私の生活の中心は株式と先物のトレードにあります。翻訳は、市場が閉まっている週末に主に取り組んでいます。
翻訳をする日は、おそらく多くの方がそうであるように、一日中画面に向き合っています。
トレードでもずっと画面を見詰めているので、太極拳で体幹をほぐし、「マジカルアイ」で眼筋を伸ばすひとときは、毎日欠かせません。

 

翻訳とトレードの相違点と共通点を今回、改めて考えてみました。
(翻訳家を目指す方でも人によってはどちらかと言えばご関心の薄い内容かもしれません。ご興味の無い方は飛ばして下さい。)

 

まず相違点としては、「努力が報われるかどうか」ということがあります。
翻訳では、どんなに効率の悪い方法で取り組もうとも、やればやっただけ経験が蓄積される実感があります。この経験の積み重ねが消え去ることはありません。
その代わり、継続して取り組まなければ大きく成長は出来ません。
その意味では翻訳講座を一定期間以上受講する、あるいは仕事で業務を請け負う、といった対外的な枠組みがあるのは良いことです。

 

対してトレードではどんなに経験を積んでも失敗を避けることは出来ません。
勿論、経験そのものは必要です。「人事を尽くして天命を待つ」心境で日々市場に臨み、実際の勝負を通じて様々な思考と感情を蓄積することは必要です。
しかしそうやって経験を積んだからと言って、未来を見通すことが出来るようになる訳ではありません。
将来の成功は保証されません。勝負を続ける限り、折々の敗北はどのようなトレーダーにとっても不可避です。
唯一可能なのは敗北の規模を小さく限定し、勝利の成果を大きく伸ばすことです。

翻訳とトレード

次に共通点としては、「自分の不完全さに向き合わざるを得ないこと」が挙げられます。
いかなる言語においても、例えネイティブであれ、その言語を完全に習得しているということは有り得ません。
必ず未知の単語は存在し、運用の間違いを犯します(そもそも、言語自体が完全なものではない上に、時代の変遷に伴い不可逆的に変化します)。
その不完全なツールである言語を、それを部分的に習得しているに過ぎない一人の人間が、可能な範囲で他者との理解共有を進める、とても地道な作業が翻訳だと言えます。

 

同様にトレードも、常に自分が不完全な存在であることを突きつけられる営みです。
五分後の世界を完全に知ることの出来る人間はどこにも存在しません。
誰もが手探りの中で、刻々と変化する市場に合わせて、あくまでも相対的に蓋然性が高いと信じる選択を決断するのです。
それは時として成功し、時として失敗します。結局トレードの成功とは、自分が不完全な存在であることを受け入れる、この一点にかかっていると言っても過言ではありません。
それを前提にして決断をし、間違いに気が付いたらすぐに修正する、その地道な作業の繰り返しです。

 

翻訳とトレードの双方を通して、自分が不完全である事実を知り、それを苦い気持ちではなく、感謝を持って受け入れること、そして立っている場所から、「今」、自分に出来る小さな一歩を進めること、それが私の日々の目標です。
クリスチャン的に言えば、不完全な存在である被造物たる人間の自由であり責任です。自分の不完全さに抗うことは破滅への道です。さらに言えば、「罪(有限であること、不死でないこと)の告白」の先に、超越の救いがやって来るのです。

 

この世的な成功の尺度は全てが相対的であり、一過性の条件を前提にして成り立つものでしかありません。
そしてこの地上から自分が消え去る瞬間は、誰にも必ずやって来ます。その瞬間に後悔を覚えるか、祝福を感じるかは、そこに至る日々の歩みの質により決まるでしょう。全ては「今」にかかっています。 

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