英日翻訳家デビュー講座Lite「コーヒーとケーキの一年間」

Story

この本のあらすじ

日本人の夫をもつアマンダは、平穏な暮らしをしようという夫の提案を受け入れて、郊外の一戸建てへ引っ越してきた。

しかし隣りの家からはひっきりなしに年寄りがわめく声が聞こえてくる。暗澹たる気持ちに陥るアマンダだったが、仕事人間の夫は頼りにならない。おまけに新居のすぐ近くには、息子の世話ができるのが嬉しくてたまらない姑が住んでいる。静かな暮らしは望むべくもない。

しかしそんなアマンダの前に現れたのが隣人ヨーコだった。英語が堪能で物おじしないヨーコは、戸惑うアマンダをよそに、するりとアマンダの生活に入り込み、いつの間にかアマンダにはなくてはならない存在となる。二人はいつもアマンダの家でコーヒーとケーキを共にしながら、英語でおしゃべりを楽しむのであった。

しかしあるとき、ヨーコの家に救急車がやって来た。ヨーコの謎めいた言動にアマンダは驚き、恐れ、次第に猜疑心を抱くようになっていく。嫁姑の確執も抱え、孤立したアマンダが最後にとった行動は?

Appeal

この本の楽しみ方・魅力

日本の四季折々のさりげない情景や小道具をちりばめながら、ご近所同士となった二人の女性の1年間の交流が描かれた作品。何かにつけて、日本流と自分流の折り合いをつけながら長年日本で暮らしてきた外国人妻アマンダの目線から見た日常生活が展開する。

しかし物語が進むにつれ、読者は次第に、これは普通の生活どころではなく、サスペンスだったのかもしれないと迷い始める。しかも、もしかしたら現実の世界でもあり得るかもしれない怖い話なのだ。だが、それがこの物語の醍醐味なのだから、アマンダといっしょに疑心暗鬼にとらわれて欲しい。その他の登場人物の心理に想像力を働かせるのもいいだろう。ヨーコがダントツで興味深いかもしれない。

また、この作品は、ひとつひとつの場面が絵になる。それだけでなく、人々の声や鳥の声、通りから聞こえる音、暑さや寒さ、冷たさ、食べ物や飲み物の匂いや感触など、五感の想像力をフル稼働させて楽しむこともできるだろう。

ブックレビュー

ブックレビュー

著者レベッカ・オトワ氏はカリフォルニア生まれ。12歳で移住したオーストラリアの学校の授業で日本語に出会い、1978年に留学のため来日。その後日本人男性と結婚。相手は19代続く古い農家。350年前に建てられた古民家を切り盛りしながら、2人の子どもを育て上げた。

本作品は著者の3冊目の著作The Mad Kyoto Shoe Swapper and Other Stories収録の13篇のうちの1篇。40年以上日本に住み、日本の生活に浸かって体得したものの見え方、見方、知識や情報は本作品に説得力を与えると同時に、日本を外から見る視線は自由で軽やか。暖かみも感じさせる。

嫁姑の関係や、高齢化社会、妻に偏る介護の負担、通勤で疲れ果てるサラリーマンなど、様々な社会問題を取り込みつつ、ラストまで一気に読ませる展開は見事。

この本のもう一つの楽しみ方

フルーツフルイングリッシュの英日翻訳家デビュー講座Liteでは英語の短編をテキストに、受講者様それぞれが作品をまるまる一人で翻訳します。二回の添削を受け、仕上げた翻訳作品のなかから公式アワード金賞を受賞すると、英日対訳本が発売されます。

対訳本

この対訳本は見開きで左ページが英語の原書、右ページが日本語の翻訳作品となっていますので、原書をご自身で翻訳したものと対訳本の和訳とを対比してみるのも良いですし、英文読解のトレーニングに和訳を活用することもできます。

こちらの対訳本には、特典として英文読解力向上のための手引書がついてきます。手引書には原書のスタイルに沿った読解のコツとワークシート、Glossary(語録集)などが載っています。あなたなりの英語学習にぜひお役立てください。
*手引書は2021年5月末に完成予定です(予定が変更になる場合があります)。マイページの商品ページからダウンロードいただけるようにしますが、完成次第、メールで配布もいたします。

手引書

購入者特典

読解力を高めるためのコツを「物語を読む」という観点から分かりやすくまとめた「英語を読み取る力をつけるための実践ガイド」が教材として付いてきます。対訳本を読む際に実践ガイドを活用して、英文読解力をアップさせましょう。

洋書やまとまった英文を読んでもイマイチ内容が理解できないという方、そもそも読み方にコツがあることをご存知ですか?実践ガイドでは短編「A Year of Coffee and Cake」の本文を取り上げながら練習問題付きでそのコツを解説しています。ストーリーの舞台設定や場面描写、登場人物の感情など、物語の読解に必要な要素の読み取り方をご紹介します。

本気で英語力を伸ばせるとっかかりとなる入門セットをどうぞ。短いため、気軽に取り組めます。がっつりと勉強の時間が取れない方にこそ手に取って欲しい。この短編のストーリー「A Year of Coffee and Cake」と「英語を読み取る力をつけるための実践ガイド」であなたをナビゲートします。

スタッフの一押しの活用方法♪

まずは独力で英文でストーリーを追いましょう。次に、日本語訳でストーリーを堪能して、英語版でどこまでストーリーが追えていたかを確認しましょう。もし読み取れていないなと思う箇所が見つかったらガイド本の登場です。

本編の該当箇所に触れながら、英文の読み方、意味を読み取るコツ、速読力アップのポイントを解説しています。もちろんガイド本なしで本体だけ楽しんでいただいてもOK!

 

訳者紹介

訳者

那須 美加

1965年、カリフォルニア生まれ。(残念ながら幼すぎて、米国の記憶は残っていないが、両親がつけてくれた名前は「美しきカリフォルニア」の意)日本語教師や塾講師として語学教育に携わる。自身の生涯学習として出会った翻訳を、人生の楽しみに加え、休日にいそしんでいる。仙台市在住

書籍情報

タイトル
A Year of Coffee and Cake(対訳版)
邦題
コーヒーとケーキの一年間
著者
Rebecca Otowa
訳者
那須 美加
ジャンル
フィクション
出版年月日
2021 / 04 / 14
ページ数
50ページ
書籍
電子版
ISBN
978-4-9911441-9-6
価格
定価990円<税込>
コーヒーとケーキの一年間