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翻訳家の一日

イメージの探求

by Satoko

最近、ある日本人建築家の写真集に記載する文字を英訳する仕事が舞い込んだ。英訳自体それほど経験があるわけではないのだが、基本、楽しそうな仕事や自分を広げてくれそうな仕事は、無理をしてでも受けるので、今回も当然二つ返事で承諾した。

しかし、ここからが大変。今回の写真集は、掲載されている写真の説明を具体的にするというよりも、抽象的で詩的な表現で、建築のコンセプトやイメージを伝えるというもの。自分の知的水準も問われるため…今回の仕事はかなりのプレッシャーだった。

難問だらけだったのだが、その中でも今回、苦戦したのが「庭屋一如」という日本語。ネットを見ていくと「庭と建物は一つの如し。自然と人は分かち難く繋がっている、という日本人の心情」と出てくる。意味はわかるが、どう解釈するのかを決めるには、まだ要素が足りない。

翻訳は、言葉を訳す仕事だが、その過程は、ほとんど「イメージを探求する」仕事だと思っている。そのための方法は色々あるが、今回は、その建築家の方にインタビューをする機会を設けた。ネットで情報も拾うことは勿論するが、やはり、その人がどういう意図でその言葉を使っているのかを知らないと、大間違いをすることになる。そのため、その人と直接話せる時は、必ずインタビューをするようにしている。

今回も、おおよそ1時間ほど事務所にお邪魔して、写真集のコンセプトから文字の解釈、どのようなことを大切に建築をしているのか、好きな建築家は誰かいるのか、また、今までの仕事やこれからの方向性、子ども時代や日常の過ごし方の話まで、色々伺った。子ども時代の話を聞くのは、その人が今大切にしていることは、大抵、子供時代の原風景が関係しているから。

今回のインタビューの中で建築家の方は、長野で生まれ自然の中で育ったこと、谷崎潤一郎の考え方がベースとなっていること、そのために「自然との一体感」や「光と陰のコントラスト」「日本的な美しさ」をとても大切にしていること等を話してくれた。

そうなると、やはり谷崎潤一郎の本を読まないわけにはいかない。幸い、彼のことは知っていたので、どういう考え方なのかはだいたい理解していたが、それがどのように英語で表現されているのか、かなり参考になりそうだと思い、英訳本を購入。でも、勿論それだけでは全然足りず、日本の建築や庭、「庭屋一如」がどのように表現されているか(捉えられているのか)を見てみる。そして、建築家の人の意図を重ね合わせながら、徐々にイメージを膨らませていく。

”Teioku-ichinyo” (an exquisite harmony between building and garden)

あーでもない、こーでもない、と思い悩んだ末、このように訳した。
正解かどうかは私にも分からない。でも、その建築家の人の意図を表現できたという自信はある。この、ちょっとした自信の積み重ねで、日々翻訳家として成長している(と思いたい)。 

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